エグゼクティブサマリー
自社のWebマーケティング、採用広報、営業向けクリエイティブ制作を再設計しました。 対象はサムネイル、記事用画像、広告バナーです。
従来はディレクターとデザイナーの往復が発生し、1本あたり平均45分を要していました。 月間制作本数は約120本で、制作関連工数は月90時間超でした。
過去の高成果クリエイティブを分解し、テンプレート化。 変数部分のみ差し替える運用に移行したことで、現在は1本あたり約8分で制作可能です。
- 制作時間: 45分 -> 8分(1本あたり)
- 月間削減時間: 約70時間
- 年間削減時間: 約840時間
- 人件費換算: 年間約420万円
- 投資回収: 約1.5か月
導入前の状況(課題)
内製運用へ切り替えたタイミングで、制作工程の非効率が顕在化しました。
従来フローは次の通りです。
- ディレクターが参考事例を収集
- 方向性を文章で整理
- デザイナーへ依頼
- 初稿確認
- 修正指示
- 再提出
修正回数は平均2.3回。 軽い案件でも3〜4回の往復が発生していました。
実作業時間は約25分でも、コミュニケーション込みで約45分。 月120本の制作で約90時間が固定的に発生していました。
問題は工数だけではありませんでした。
- 制作待ちでABテスト設計が止まる
- 勝ちパターンの特定が遅れる
- 広告費の無駄打ちが増える
- 「このデザイナーなら通る」という暗黙知に依存する
実施した施策
1. 制作工程を分解し、判断業務と定型業務を分離
制作工程を分解すると、次の構造でした。
- 構図決定
- コピー設計
- 色・トーン決定
- レイアウト作成
- 書き出し
- 格納・共有
1〜3は判断業務、4〜6は定型業務でした。 最初に4〜6の標準化を優先し、工数の大半を削減する方針を取りました。
2. 高成果クリエイティブを分析し、再現ルールを定義
過去の高CTRサムネイル約300点を収集し、アスペクト比別に分類しました。 分析結果から、成果が出る構造をテンプレート化しました。
- 人物配置は中央か右寄せが中心
- 視線方向はテキスト側に寄せる
- 使用フォントは3種類に限定
- 色は高コントラストを基本
- 余白比率の基準を明文化
特に効果が大きかったのはコピー改善より余白比率の標準化でした。
3. 変数差し替え型の制作基盤を実装
使用技術:
- OpenAI Codex(開発支援)
- Next.js(入力UI)
- Googleスプレッドシート(テンプレート定義管理)
- Google Drive(生成物の自動保存)
- ナノバナナプロ API(画像生成)
データフロー:
- スプレッドシートにテンプレート定義を登録
{{人物名}}{{ベネフィット}}などのプレースホルダーを設定- UIで変数を入力
- APIを実行し画像を生成
- Driveへ自動保存
4. 品質担保のための運用ルールを先に設計
テンプレート量産によるブランド毀損を防ぐため、次を固定しました。
- 使用可能カラーの制限
- フォント固定
- 公開前の簡易チェックフロー
また、訴求軸の決定は人間が担当し、完全自動化は避けています。
初期トラブル:
- 文字つぶれ
- 想定外フォント出力
- 人物表情のばらつき
対処内容:
- プロンプト粒度を詳細化
- フォント指定を明示
- 解像度条件を固定
開発期間は約1か月、導入レクチャーは1週間です。
成果(定量)
- 制作時間(1本あたり): 45分 -> 8分
- 制作関連工数(月間): 90時間超 -> 約20時間
- 月間削減時間: 約70時間
- 年間削減時間: 約840時間
- 人件費換算: 年間約420万円
- 投資回収: 約1.5か月
制作スピードは約82%短縮しました。
現場の変化(シズル)
最も大きな変化は「待ち時間」の消失です。
導入前は、ディレクターが修正依頼を出し、デザイナーの再提出を待つ時間が連続していました。 導入後は、担当者がテンプレートを選択し、変数入力と微調整で当日中に複数案を出せる状態になりました。
具体的な変化:
- ABテスト回転数が約3倍
- ディレクターとデザイナーの往復が大幅減少
- 戦略設計と訴求検証に時間を再配分
- 依頼文の書き方に依存した属人性がほぼ消失
現場からは当初「自由度が下がる」という反発がありました。 ただ、テスト本数が増え成果確認が早まったことで、運用ルールは定着しました。
同じ課題を持つ企業への示唆
以下の条件がそろう企業では、再現性が高い施策です。
- 月50本以上のクリエイティブ制作がある
- 過去成果データが一定量ある
- ブランドガイドラインが存在する
導入期間は1〜2か月が目安です。 成功率を上げるポイントは次の3点です。
- 初期分析に時間をかける
- テンプレートを増やしすぎない
- 完全自動化を目指さない
制作量が少ない企業では、投資回収に時間がかかる可能性があります。

